電磁波基準値について(part.2)

電磁波測定士として、測定をする際基準となる電磁波セーフティガイドラインは、スウェーデンの※VDT規制ガイドラインのMPR-Ⅱを基本としています。
※VDT(ビジュアルディスプレイターミナルの略)ブラウン管のディスプレイ。

MPR-Ⅱの生い立ちは、三浦正悦著「電磁界の健康影響」に詳しい記述があるので引用抜粋させて頂きますと、

高圧送電線由来の磁界と同じ周波数の磁界をVDTが漏洩していることから、一部の労働組合や作業者は健康への影響に不安を感じていた。この不安感から突出した行動を示したのがスウェーデンの労働組合で、スウェーデン政府に何らかの方策実施を要求した。その結果、基準値として採用できるような科学的な論拠は発見できず、ALARA(合理的に可能な限りできるだけ低くする)方針が選択されてMPRガイドラインの発行に結びついた。
1986年、規制案の制定あたって、市販されていたVDTの測定を行い、その中央値をもって基準値とすることが提案された。中央値を越えるモデルは、中央値以下のモデルと同水準の漏洩量までに技術的に改造できるであろうとして、ガイドラインが提案された。
スウェーデンのTCOという労働組合総連はMPRガイドラインに対して、規格値は単純に厳しければ厳しいほどよいことであるという論理に基づいて、独自の規定を提案した...

引用ここまで

私は、MPR-Ⅱガイドラインの生い立ちをこの書籍で初めて知った時、意外というかアバウトな考えというか科学的な論拠が発見できないなら、懸念されていた市販のVDTの測定を行いその中央値をもって基準値としてしまう流れに驚きました。

本当はもっと科学的な根拠があるはずだと思っていたからなのですが...

でもよく考えてみると、科学的な根拠が得られないからそのまま放置してしまうのではなく、できる範囲で最善の基準値を設けたことで、当時のVDTの開発に性能の追求だけではなく、磁界の漏洩を増大させない要素が加わり、結果として、作業者が浴びる磁界の強度は基準値内で抑える技術も進歩したであろうことは、容易に推測されます。

科学的な根拠が得られないから、何もしないではなく、必要に応じ最善と思われる対応策を制定してしまう原動力に感嘆してしまいました。

このような経緯でMPR-Ⅱガイドラインは制定されているので、磁界・電界の基準値が、今のところ長期的ばく露影響を及ぼす値より低いか高いかそれとも的を得ているのか、私には断言できるはずもありません。

科学的な根拠が無いから無視するか、あるいは科学的な根拠が無いからこそ体への影響が懸念される要因がある以上基準値は厳しく設定しておくことで、未然に回避すると考えるかは、各自選択の自由です。

今後の、疫学研究や生物学的研究の成果に注目していきたいと思います。

電磁波基準値について(part.3)へ続く

このページの先頭へ